地域通貨立ち上げの課題

2006年09月04日

神戸財界のベテランが集う勉強会にて、地域通貨と市民銀行の立ち上げについて講演。
市民・企業・NPO・地域通貨事務局、それぞれのプレーヤーに地域通貨の使い道をふんだんに用意することと、
地域通貨事務局が充分な現金収入を得る手段をあらかじめ確保しておくこと。
この2つがきちんとしていないと、「循環しない」地域通貨になったり、「信用のない」地域通貨になってしまいます。

以下、本日配ったレジュメです。

地域通貨と市民銀行~その立ち上げと課題~


0、地域通貨はなぜ広まらないのか?


1、地域通貨を使える場面をどう増やすか?

・ボランティアの賃金
・企業労働の賃金の一部
・企業の販促ツール
・コミュニティーサービスに対する支払い
・企業サービスに対する支払いの一部
・公共サービスに対する支払いの一部
・市民銀行の利子
・国民通貨銀行の利子の一部
・資源売却の対価


2、事務局をどのように維持するか?

・地域通貨の販売
・地域産品のネット販売
・地域ポータルサイトの広告枠販売
・地域情報紙の広告枠販売
・行政経費の節約分を行政と折半
・企業・個人からの寄附金マネジメント(市民銀行手数料)


3、事務局はどのような時に地域通貨を発行するか?

・市民が事務局に入会金を支払ったとき
・コミュニティーサービス提供団体には無償または出資に応じて
・コミュニティーに寄附をした市民・企業に対するボーナスとして
・市民銀行に預金した市民・企業に対するボーナスとして
・企業や国民通貨銀行の販促ツールとして販売
・事務局スタッフや事務局ボランティアに対する賃金


4、まず何から始めるか?

・市民銀行の立ち上げ
・商店街のポイントカード
・有志による個人サークル
・地域カルチャーセンターの立ち上げ


5、そして、誰が立ち上げるのか?


世界の地域通貨と市民銀行(参考資料)

タイズ財団

1976年に現会長のドラモント・パイク氏が設立
年間2000万ドルを1000の市民運動に助成している
当時は小さな財団の助成コンサルタントとして働きながら、内職的に始めた
独自の基金は持たず、「パイク氏のコンサルティング会社が手数料をとっている」形
300の寄付者から預かる8000万ドルの基金をひとつのNPOとして登録した
助成対象は社会正義・地域問題・経済開発・国際問題・環境問題の5分野
特定プロジェクトに対する助成だけでなく、ジェネラル・サポート助成もある
寄付者が助成対象を決めている場合は助成額の1.5%、
社会情勢や各団体の活動内容と寄付者のニーズを分析して簡単なアドバイスを与える場合は助成額の5%、
本格的なコンサルティングを提供する場合は助成額の12.5%を手数料として取る
誰がどこに助成したか分からないように、匿名性を非常に重んじている
タイズ・センターというインキュベーション(立ち上げ)施設も運営
場所やノウハウだけでなく、税控除資格とNPO法人格の「庇を貸す」機能がある

カタリシス

1984年に設立されたマイクロ・ローン
中南米の貧しい女性が立ち上がるきっかけとして50~300ドルの少額ローンを行う
現在25000件、総額500万ドルのローンがなされている
途上国政府に援助するのではなく、直接個人に融資する形で返済率97%という実績

ワーキング・アセッツ

1983年に設立されたクレジットカードと長距離電話の会社
カード支払い金額の5%と、長距離電話通話料の1%が自動的にNPOに寄付される
クレジットカード会員10万人、長距離電話加入者30万人、年商1億3000万ドル
年間500万ドルにのぼる寄付金を顧客の投票で助成対象団体に振り分ける
政府や企業に対する抗議電話を無料にする「市民アクション」プログラム
オンライン財団「eGrants.org」と組んで広く薄く寄付を集める(手数料10%)

NPO応援ポータルサイトガンバNPO.net

http://www.gambanpo.net/esgn/ESGN0000.cfm

税制の問題

アメリカでは年間18兆円の寄付がなされているが、日本では5000億円(3%以下)
アメリカの個人寄付は年間14兆円だが、日本では270億円(0.2%)
アメリカも税額控除(寄付した金額だけ税金が安くなる)ではなく所得控除
日本では企業は所得の25%まで控除できるが、
個人は政府・政治家と特定公益増進法人そして認定NPO法人(わずか19団体)に対する寄付が所得控除されるのみ

企業メセナ協議会

文化庁から認可を受け1990年に設立され、1994年に特定公益増進法人となる
25000の公益法人のうち特増法人の指定を受けているのは1000件(4%)
協議会から認定された活動団体が寄付を集めると、その寄付が控除の対象になる
協議会が認定した芸術活動に対し、544社が5億6000万円の助成をした(1996年)
活動団体が「特定公益増進法人」の庇を借りて、独力で寄付を集めるスルー方式

認定特定公益信託

信託終了時に財産が委託者に帰らず、解除もできず、条項の変更も大臣の許可制
個人でも寄付金は控除対象となる(法人は特定公益信託でも損金参入できる)
733億円の財産を持つ571の公益信託が、累計7万7500件、270億円を助成した
融資や信用保証はできず、助成や奨学金という形しかできない

自治法基金

行政が条例に基いて出資したり住民や企業から寄付を集めて運営する
行政への寄付なので控除対象となるのがメリット
池田市や宮崎市は市民から寄付があると同額を行政が追加するマッチング方式

SRI(社会的責任投資)

古くからある例として、タバコ、ギャンブル、武器関連企業への投資をしない
さらに環境に優しい企業か、法律遵守しているかなどが基準に加えられる
欧米では、昔から宗教上で投資先を選別している
米国での全投資ファンドの約12%がSRIに基づいている

市民バンク

1989年に永代信用組合と(株)プレス・オールターナティブが提携して発足
1990年に女性の経済的自立を支援する世界ネットワーク「WWB」日本支部と提携
都内信組・伊丹市・西京銀行(山口県)などと提携し、各地で市民バンクを設立
融資上限は設備資金700万円、運転資金500万円、合計で1000万円以内
利率は融資日の長期プライムレート、返済期間は設備資金10年、運転資金7年
事業主の個人保証と連帯保証人が2名以上必要
申し込み者の「夢作文」と3年分の事業計画書をもとに審査
事業内容の相談や計画書の作り方まで、実務面も幅広くサポート
http://www.p-alt.co.jp/bank/

未来バンク

1994年東京都に設立、理事は地方公務員や会社員など7名がボランティアで務める
集めた出資金を「未来バンク事業組合」が「未来舎」に出資、それを組合員に融資
利率3%(1%は運営費、2%は貸し倒れ引当金)、代表者の個人保証と連帯保証人
環境・市民事業・福祉の3分野だけを対象に、証券マンなどが審査
組合員数340名、出資金総額11,600万円、融資累計額48,100万円
http://homepage3.nifty.com/miraibank/

北海道NPOバンク

2002年に地元の学者・会計士・税理士・NPOなどが設立
「北海道NPOバンク」は出資を直接受けることができないため、
「NPOバンク事業組合」を窓口として作って組合員から出資を集める形
事業組合は集めた出資金を全額NPOバンクに出資し、NPOバンクが組合員に融資
融資上限は200万円(2期以上の事業実績がある場合は出資金の100倍まで)、原則1年以内、
金利2%固定、代表者の個人保証と連帯保証人1名
道民・NPO・企業や行政から約4300万円を集め、15団体、累計2680万円に融資
http://npo-hokkaido.org/bank_hp/

オーストリア・ヴェルグルの労働証明書

1932年の世界恐慌下で町長が「ゲゼルの自由貨幣理論」に基づき発行
発行翌月には額面の1%の切手を貼らなければいけない「-1%の利子」
町民ひとりあたりわずか1.3シリングしか発行しなかったが、経済は急速に活性化し、1年後には失業者が25%減った
1年後にはウィーン中央政府が地域通貨の発行を禁止

イサカアワー

1991年に人口3万人のニューヨーク州イサカ市で始まった紙幣型地域通貨
1アワーは10ドルに相当し、農業者の平均時給と等価
機関紙「アワータウン」に自分の住所・提供できるもの・欲しいものの広告を出し、
5ドルを支払うと、機関紙とともに2アワーズが送られてくる
現在数千人の住民と500のビジネスが参加しており、
機関紙に掲載されている「提供できるもの」「欲しいもの」リストは1500項目
98年にアワーによって行われた取引高は40万ドル、発足以来の累計で200万ドル
地元生協や農業市場、コミュニティーバンクも参加して、
農業や地域ビジネスにアワーを無利子で融資し、広告を機関紙に掲載している

アルゼンチンの地域通貨RGT

1995年にPAR(地域自給プログラム)というNPOが通貨危機に備えて始めた
交換クラブは、ノードと呼ばれる各地のグループからなる緩やかなネットワーク
1クレジットは一ペソに対応しているがペソとクレジットの交換はできない
クラブ内でのあらゆる取り引きはペソを使用せず、クレジットだけで行われる
新規加入時に50クレジットが支給され、週1回のノードマーケットで使用
2000年には数万人規模のマーケットが開催され、総発行量450万クレジット
2002年には参加者が600万人を超えたが、紙券の過剰発行、偽造の横行、割引販売など
さまざまな問題が発生し、システムが崩壊へと向かう。

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