国民投票法と衆愚政治

2006年02月26日

kokumintouhyou国民投票法を考えるパネルディスカッションを傍聴してきました。
自民・民主・公明・共産・社民の論客が集まり、
国民投票法の必要性から具体的な内容まで、
思った以上に公平な運営のディスカッションでした。

共産党と社民党は、未だに「憲法9条改正につながる国民投票法には反対」
という立場なのですが、これは「国民は愚かだ」という価値観の裏返しです。
憲法9条を変えるか否かは国民が決めるべきことであり、
共産党と社民党は、国民投票の土俵の上にまず乗ってから、
「憲法9条を変えるべきではない理由」を国民に向かって説得すれば良い。

国民投票や住民投票を「極端な(間違った)結論を導く恐れがある」と否定する政治家は、
自分こそが「衆愚のたまもの」であることを思い出したら良いと思うよ。
政治家はみな国民・住民の直接投票によって選ばれているのですから。

以下、本日のメモです。

060226国民投票法シンポジウム


●国民投票法は必要か?

船田元(自民党)
中身はともかく、国民投票法を議論すべきなのは間違いない
立法の不作為という言葉があるが、むしろ政府の怠慢と言える
衆参で過半数を取れば国民投票法案は可決するが、3分の2以上の賛成を目指したい

斉藤鉄夫(公明党)
憲法に規定されている以上、具体的な法律をつくるのは当然だという意見
現在の憲法は優れているが、さらにいくつか加えるべきものがある
この秋に加憲案を出すが、9条1項2項は堅持をし、第3項を加えるかどうか議論している

枝野幸男(民主党)
改憲の中身が良ければ改憲すべきであるし、中身が悪ければ改憲すべきでない
国民投票法は憲法施行当時につくられているべきもので、改憲の中身とは関係ない
国民投票のルールについては各党の意見があるだろうが、全会一致でつくりたい

笠井亮(共産党)
改憲ルールが無かった60年間、なにひとつ困ったことは無かった
自民党や民主党の改憲案を見れば、9条改憲が目的となっていることは明白
滋賀県の弁護士会長も国民投票法案の提出に反対している

辻本清美(社民党)
国民の中から「国民投票法をつくってほしい」という動きがほとんど起こっていない
アメリカやアジアの関係が異常な現状で、優先すべき政治課題とは思えない
環境権など個別の改憲項目も、決して国民の声が盛り上がっているとは言えない

折田泰宏(弁護士)
国民の知らないところで議論が進み、国民の意見を反映しないルールがつくられると困る
どのようなルールをつくれば最も国民の意見が反映されるようになるのかを考えるべき

小林節(慶應義塾大学教授)
国会法がなければ国会が運営できないように、手続きの具体的ルールは必要
国民投票法が成立した後で、変な改憲案が出てきたときには国民投票で否決することが大切

枝野
「国会の3分の2が賛成したら憲法が変わってしまう」と思っている国民が多い
憲法は国民を縛るものでなく、国民が公権力を縛るためのものだということに気付いてほしい

船田
国民投票法は憲法改正のルールづくりであり、共産党や社民党にも議論に加わってほしい

辻本
ヨーロッパでは国民投票をもっとやっていると聞いていたが、実際は慎重に実施されている
他のテーマで国民投票に慣れてから、憲法改正についての国民投票法を行っても遅くない

斉藤
岩国の住民投票を見たが、住民が真剣に考えている姿が印象に残った
国民投票ルールができることにより、国民が真剣に考えるきっかけになれば良いと思う

枝野
憲法改正の国民投票法と、憲法改正以外の国民投票法を同時につくることを考えている
憲法に準ずる法律、たとえば皇室典範を憲法改正より先に国民投票にかけるべき

船田
6月までに何が何でも国民投票法をつくるべきとは思わないが、タイミングは自然に決まる

笠井
反戦ビラをまくだけでも逮捕される現状で、権力側のルール運用について信用できない

小林
憲法では立法権を国会が独占しているが、諮問的国民投票制度は現行でも可能

今井一(ジャーナリスト)
法的拘束力のない国民投票であっても、結果に大差がつけば政府や議会は従わざるを得ない


●ルールの中身について

斉藤
改正点ごとに個別に国民投票を行うべきで、一括投票は投票者にとって難しすぎる
2~3点ずつ憲法改正の国民投票を行い、じっくり少しずつ進めてゆくべき

船田
原則として個別発議・個別投票が順当だが、改正点が少ないときは一括もあり得る
逆に発議部分が数十問と多すぎる場合は、関連項目を束ねることがあっても良い
憲法9条と環境権を同時に国民に尋ねるようなことはすべきでない

枝野
個別投票は当たり前で、一括投票が必要な唯一のケースは新憲法制定時

笠井
政権交代もないのに新憲法を制定したような国はない
たとえば9条改憲と軍事裁判所の設立は一体の問題であり、関連項目の束ね方は簡単ではない

辻本
今の憲法改正規定は全面改正を想定しておらず、前文や9条など骨格の改正はすべきでない

枝野
公明党も加憲であり、法制論だけでなく政治論としても全面改正は有り得ない


●キャンペーン活動とメディア規制

船田
虚偽報道やメディア不正利用の禁止を与党案としてまとめた
しかし、人を選ぶ選挙と政策を選ぶ国民投票の違いはあるので、規制を弱める流れになっている

笠井
海外では選挙や国民投票の規制など有り得ない
キャンペーンの不公平などはメディア側の自主規制で充分にやれる問題

小林
与党は虚偽報道の規制を行うと言うが、何をもって虚偽と言うかを具体的にすべき
たとえば公明党と共産党のビラ合戦は言論で決着をつけるべきであり、虚偽認定すべきではない

辻本
公務員のキャンペーンも地位を利用しなければ自由であるべき
海外ではCM枠を買うときは出資者を明記するようなルールを設けており参考になる

枝野
選挙のスポットCMは政党が主体となるが、国民投票のスポットCMを誰が流すのか不明
インターネットは規制のしようがないが、マイナス面が国民に周知されていけば大丈夫
スイスは政治CM禁止、フランスは1週間前から禁止、紙メディアは各国とも自由

船田
警察・検察などの特定公務員については運動規制をすべき、教員については迷っている
在日外国人が特定の目的をもって組織的な運動を行うことについては規制しなければならない

枝野
9条改正のロビー活動を組織的に行っているアメリカ大使館を規制することはできない
特定公務員が意見表明をすることも、運動との線引きが難しい
むしろ「ここまで出来る」と運動項目を明記するような形が必要になると思う

辻本
取り締まりは誰がするのか?と考えると、権力が介入することの問題点はある

小林
教員も理由とともに賛否を述べるようにしないと、この国の民主主義は育たない

船田
自由な投票行動を阻害するキャンペーンを規制するのであって、誤解のないようにしてほしい


●憲法改正案の公的な解説・広報を誰が担うか?

枝野
選挙管理委員会は手続きと事務を行うが、広報内容については発議者が関与すべき
選挙公報を議会が主導して行うならば、衆参6人ずつ各党で国民投票委員会をつくるのがよい

船田
与党は広報についてアイディアが無かったが、国民投票委員会の案は面白いと思う

笠井
国民の機運が無いのに3分の2の国会議員が発議すること自体がおかしい

今井
総選挙で憲法改正の発議をするか否かが争点になれば、民意を問うたことになるのではないか?

枝野
憲法改正の発議を総選挙の争点にすることはおかしい
国会議員が政治生命を賭けて発議し、国民が投票で結論を出すのが現行憲法の改憲規定

辻本
国会内の勢力にかかわらず、憲法改正に賛成・反対の広報は半々のスペースを取るべき

小林
代議士は一度当選すれば、情報力を活かして普通の国民が気付かない問題も発議すべき
国民の機運がなくても、代議士が責任をもって発議するのは不思議なことではない
改憲反対派は、国民投票の中で改憲推進派の問題点を暴き、国民投票で護憲を勝ち取るべき

枝野
パンフレットのページ数などは賛否半々でよいと思う
国民投票委員会の議決については3分の2を考えているが、少数意見の尊重も明記が必要


●投票権者の範囲、周知期間、成立要件など

船田
与党案では20歳以上となっているが、個人的には他国と同じく18歳以上が適当だと思う
しかし現実問題として、選挙管理委員会での18歳以上の名簿を作り直すのは難しい

斉藤
マニフェストで参政権18歳以上を公約しているので、国民投票についても18歳以上としたい
岩国では投票率50%以上という成立要件があるため、変なボイコット運動が起こっている

辻本
海外には15歳以上という国もあり、争点が理解できないのは子どもも大人も一緒
低投票率で成立した憲法では「あんな一部の意見だけで決まった憲法」と軽んじられる

枝野
同じ高校3年生の中で、誕生日によって国民投票が出来る人と出来ない人がいるのはおかしい
「高校卒業」など同じ学齢によって投票権を与えたほうが良いのではないか
民法の成人年齢など連動する事柄が多いので、政治の側が議論をリードすべき

折田
与党案では周知期間を「最低30日」としているが、少なくとも60日とすべきではないか?

船田
与党内でも30日では短いという意見が出ており、今後検討してゆきたい

斉藤
与党内協議で30日という提案をしたのは公明党だが、変更も検討すべきだと思う

小林
興奮の中で自民党が圧勝した前回の総選挙を反省し、冷却期間を含めた60日を提案したい

今井
ポーランドでは投票前日にお酒を出すことを禁止している
フランスでは投票2日前の金曜・土曜の集会を禁止して冷却期間をおいている


●本日のまとめ

斉藤
本日あった意見は党に伝えたいが、特に戸別訪問や飲食の伴う討論会は解禁すべきと思う

船田
自民党はいつも規制ばかり考えているという誤解は解いていただきたい
中山会長とともに、多くの意見をまとめてきちんとしたルールをつくってゆきたい

辻本
60年間続いてきた屋台骨をどうするか?という非常に重い問題だと認識している
手続き法であっても、日本をどういう方向に導く動きなのかを見極めなければいけない

笠井
国会では議論されてきた問題だが、国民が議論に参加できていないと感じる

枝野
「改憲ありきではない」という私が、あえて国民投票のルールについて考えている
市長が市民に「市政運営にご協力いただきありがとうございます」と挨拶するが、
使用人がご主人さまに「仕事に協力してくれてありがとう」というおかしさを感じるべき
決めるのはご主人さまであるところの国民なのだということ

中山太郎(衆議院憲法調査特別委員長)
国民のためになる憲法を国民自身がつくってゆけるように、私たちが制度を整えたい

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