ニート研究の第一人者、玄田有史さん
2005年07月27日
仕事もせず、求職活動もせず、学校にも行かない若者がNEETと呼ばれ社会問題化しています。
「Not in Employment, Education or Training」の頭文字をとった略語です。
玄田先生いわく、「ほとんどのNEETは労働意欲があり、親に申し訳ないと思っている」とのこと。
また、貧しい家庭の低学歴の若者が多く、「金持ちの親が甘やかしている」は誤解だそうです。
予防策としては、兵庫県が中学生を1週間職業体験させる「トライやるウィーク」のように、
子どもの頃から社会との接点を持たせてあげること。
また、個別で親身に進路相談にのってあげる態勢も必要だということです。
「学校の部活動で味わうような、小さな理不尽や挫折も重要かも知れませんね」と
終了後にビールを飲みながらお話しました。
以下、本日のメモです。
050727玄田有史・東京大学社会科学研究所助教授
NEETはブレア首相が「社会的排除防止局」を創設した際に出来た概念
2003年に就職も進学もしない若者(15歳~24歳)は89万人、うち就職希望もない人は40万人
この40万人という数字を見たとき、日本のNEET問題に初めて気付いた
2002年の若年無業者(15歳~34歳、通学せず配偶者なし)は1992年→2002年で131万人→213万人
うち求職している「完全失業者」は同じく64万人→129万人
求職活動をしていない無業者、いわゆる「非求職型NEET」は26万人→43万人と増加
就職を希望していない無業者、いわゆる「非希望型NEET]は41万人→42万人で変わらず
彼らはフリーターとも失業者とも異なり、これまでスポットライトを当てられることはなかった
NEETという概念ができて、引きこもり問題がやっと労働市場の問題になった
高学歴者は「失業者」になるが、低学歴者は「失業者」にもならずNEETになり易い
中卒・高卒者は15歳~34歳全体の52%だが、就職を希望しないNEETの81%を占める
中学卒や高校中退は生活リズムが不規則になるなどして、求職活動もままならない
ハローワークやジョブカフェにも行かないケースが多い
求職活動をしない理由の第一位は「病気やけがのため」で10万人いる
彼らの7割は以前に仕事をしていたが、多くは心の病気で求職活動をやめている
NEETや引きこもりを続けていると、本人にもその理由が分からなくなってくる
NEETや引きこもりに理由を求めて解決しようとしても上手くいかない
就職を希望しない「非希望型NEET」のうち7割は一度も働いた経験が無い
NEETと深く付き合うと、ほとんどは労働意欲があり、親に申し訳ないと思っている
そんな自分を直視できずに、口先では「別に働きたいとは思わない」と言っているだけ
「NEETは豊かな親が甘やかしている」と言われるが、実態は違う
15歳~34歳の全体は、所得1000万円以上の家出身が19%、300万円未満の家出身が18.4%
非希望型のNEETは、所得1000万円以上の家出身が14.4%、300万円未満の家出身が37.6%
低所得家庭出身のNEETは、親も問題解決に積極的ではなく、政策の手が届かない
さらにこの1997年から2002年にかけて、親と別居するNEETが18.9%→24.7%と増えている
今後は中年NEETが大問題になってくると予想される
引きこもり経験者や、働いた経験がない中年の就職は、現実的に難しい
生活保護制度は自立を支援したり生活設計を立ててあげる形に変えてゆかなければならない
質疑応答
Q:晩婚化で「家事手伝い」が長引いているのもNEET増加の一因ではないか?
A:NEETと晩婚化の関係については面白いテーマだと思うが研究できていない
85万人のNEETの男女比は半々
首相官邸サイドは「家事手伝い」をNEETに入れないため、21万人少なく見積もっている
Q:景気が良くなり求人が増えれば、NEETは自然に減ってゆくのではないか?
A:将来的には若年労働力が不足してくるのでNEETは減ると思うがゼロにはならない
Q:NEETの数に地域的な偏りはあるか?
A:NEETが多いのは沖縄、大阪は失業が多いもののNEETは少ない
Q:NEETの親には何か特徴的な傾向があるか?
A:NEETの親は二極化しており、過干渉か無干渉
Q:NEETを減らす方策は?
A:若者自立塾で規則正しい生活を3~6ヶ月続けさせるとNEETを卒業できることが多い
若者支援のNPOもたくさん生まれたが、経営ノウハウが無いためなかなか続かない
「若者を支援する若者」を支援することが出来れば上手くいく
労働力不足や社会保障制度の維持を理由にしたNEET対策は、NEETに嫌がられる
若年対策は「個別的・持続的・包括的」に行うべき
ホームドクターのように個別に進路相談に応じてゆくのが有効だが、コストがかかるのが難点
兵庫県の「トライやるウィーク」には人付き合いの苦手意識を除く効果があると期待している
Q:なぜNEETを減らさなければならないのか?社会的コストの増大を防ぐためか?
A:NEETの社会的コストについては計算できていない
しかし「不登校も個人の選択」と放置した結果、彼らの人生は非常に困難になった
普段からNEETと接していて、彼らの人生をなんとかしたいと純粋に思っている
カテゴリー:
テーマ:
関連記事 :
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL
http://nada-kobe.com/mt/mt-tb.cgi/709
コメント
- nana
2005年07月29日 13:46NEETという言葉に反応しました。 先日日本のニュース記事で目にしたのを思い出しました。
私の友人も地元を離れ、大学を卒業しましたが、就職できずフリーター生活を続けていましたが、 結局地元に戻り仕事のないまま“プー”です。 学生のときから時々学校に来なかったりということもありましたが、友人として接している限りでは何も問題があるようには見えませんでした。
時代の流れでしょうか。。 他人と接することを苦手とする人が増えているのですよね。いろいろな背景があるとは思いますが、これからどんどん増えて日本に深刻な問題が起きないか心配です。 年金の問題とかもあるし。。 - いさか
2005年07月31日 23:14nanaさん、コメントありがとうございます。
ニートやフリーターについては、本人の問題だけでなく、周囲のサポートの有無も関係します。
同じ玄田先生の研究によれば、「転職の際に助言をくれた、職場以外の友人」がいると、
「転職後の満足度や収入、労働時間や家庭生活が改善した」と答える人の割合が
1.3~1.5倍ぐらい増えるということです。
ウィーク・タイズ(緩やかで弱い絆)の有無が、この問題のカギを握っているようです。nanaさんも、そのお友達を時々気にかけてあげて下さい。