日・中・韓はオトナの関係を築けるか?
2005年05月08日
日・中・韓・東南アジアの専門家にアジア安全保障の専門家を加えた討論会に参加。
中国は日本の国連安全保障理事国入りや日米安保の強化を望んでおらず、
日本もアメリカ追随に偏りすぎたためアジア外交が展開しにくくなっています。
日中韓の友好は互いの政治的・経済的利益にかなうものであるはずなのに、
靖国問題など、互いに引けない「シンボル的問題」を正面から解決するのは難しい現状。
どちらかが先にオトナになって譲歩しなければ、前向きな関係は築けないのですが・・・
以下、私のメモです。
050508日本・韓国・中国 時局討論会
高龍秀(甲南大学経済学部教授・韓国経済)
韓国は竹島を自国の領土だとして、携帯電話のアンテナなどを設置している
日本の公式見解は「竹島は日本の領土で韓国が不法占拠している」
このレベルの喧嘩を続けても全く生産的ではない
油田も日韓の共同開発とするのが最善の方法ではないか
王柯(神戸大学国際文化学部教授・中国現代思想史)
中国の過激なデモは国益を損なう行動であり、同胞として恥ずかしい限り
一部の日本の政治家が中国のデモを煽る発言を続けたのも、国益にかなう行動とは言えない
日本はアメリカ外交ばかり重視して、周辺諸国との関係を真面目に築いていない
政治家は100年以上先を見通す思想家であるべき
孫京美(立命館大学政策科学部講師・政治文化論)
中学・高校の講師もしているが、国レベルだけでなく住民レベルでの交流が必要と感じる
周イ生(立命館大学政策科学部教授・エネルギー環境政策)
日本の一部政治家の発言と中国のデモにより、日中関係は近年最悪の状態となっている
「反日教育のせい」「中国は恐ろしい国」という大臣の発言と、それを報じるマスコミ
しかし私は「反日教育」など一度も受けたことがない
戦後、中国人は敵の子である残留孤児を育て、中国は莫大な戦後賠償を放棄した
日本も靖国神社などに拘らず、大局に立って譲歩してもよいのではないか?
加藤弘之(神戸大学大学院経済学研究科教授・中国経済)
日中貿易が盛んになり、日中の経済はWin-Winの関係と言われてきた
今回のデモで、その底流には反日感情があることを再認識した
「中国の共産党体制が経済発展に寄与した」という説も考え直さなければならない
茅原郁生(拓殖大学大学院国際協力学研究科教授・アジア安全保障)
国家関係は政治・経済だけでなく、安全保障の面からも考えなければならない
東アジアの構図は中国 v.s.日米安保関係であり、中国は日米関係を薄めようとしている
中国は政変から生まれた国であり、日本は国敗れた反省から立ち上がった国
安全保障に対する考え方が根本から異なるが、そのギャップに目を向ける時期がきた
片山裕(神戸大学大学院国際協力研究科教授・比較政治体制)
小泉首相がアジア外交に無関心すぎるのは、あらゆる識者・実務家が指摘している
「靖国参拝を止める」という個別対応ではなく、東アジアのビジョンを示し包括的に解決すべき
暴徒化した若者は将来の中国を担う改革の旗手であり、彼らとの関係をどう築くかが重要
芹田健太郎(神戸大学名誉教授・国際法)
韓国併合は当時の国際法に基づいた「合法的」な行為、というのが日本政府の見解
戦後補償も法的には解決済みというのが日本政府の見解
しかし法律主義で世界を侵略する手法は、かつてのイギリスとまったく変わらない
質疑応答
Q,中国の反日デモは韓国の反日デモに影響されたという説があるがどうか?
A,王
韓国のデモは「官製デモ」と言われたのに対し、中国はネット経由の民衆デモ
ODAや台湾、常任理事国入りなどの問題が直前2ヶ月に続いたのが誘因
A,茅原
日米安保体制が今後も重要になることは間違いないが、偏りすぎているのが問題
日本の常任理事国入りは、中国から見れば「日本がさらにアメリカ寄りになる」こと
中国はアジア唯一の核保有国であり常任理事国というポジションを守りたい
政府としては表立って反対できないため、「国民感情が許さない」というデモになった
A,加藤
今回のデモで最も損をしたのは中国政府
民衆デモをコントロールできなくなり、国際社会にマイナスイメージを与えた
Q,ODAは補償ではなく資源の再分配であり、豊かな国の当然の行いではないか?
A,片山
外務省の担当者にアンケートをとると、ODAは賠償のつもりで行われている
Q,日本の政治家はなぜ靖国参拝を強行しなければならないのか?
A,茅原
靖国神社を「無名戦士の墓」として祀る日本国民の文化も理解してほしい
小泉首相もA級戦犯をお参りしているのではなく、国の礎となった先輩にお参りしている
中国も靖国問題をカードに使いすぎて、挙げた手を降ろせなくなっているのではないか
日本が「言うべきことを言いう国」になり、アジアからの反発が起こっている過渡期
Q,日本は何回も謝っているのに、なぜ中国の指導者はそれを認めないのか?
A,王
周恩来はかつて「日本国民は無罪であり、悪いのはA級戦犯だけである」と許した
しかし日本の政治家がA級戦犯の祀られている靖国を参拝すれば、中国の立場が無い
日本は1回謝る間に、中国を逆なでする言動を10回行っている
Q,平和主義外交を理念としながら、日米安保体制を強化するのは矛盾ではないか?
A,茅原
理念として追求しながらも、現実は自衛力を持つのが当然のこと
日本が持つ防衛力を最低限にして、足りない部分は日米安保に求めるのが日本の方針
対米依存が強まれば、日本のアジア外交の裁量権が狭まることが予想される
アジア外交のために対米依存から脱却するためには、自前の防衛力増強しかない
Q,今後どんどん嫌日・嫌中が増えてゆくのをどう食い止めるか?
A,片山
東南アジアでも、国民の怒りはやがて自国の非民主的政府に向かっていった
中国に日本企業が大量進出した一時的な反動なので、日本はじっくり関係改善すべき
第二次大戦で100万人死んだフィリピンでは、しかし靖国参拝が問題視されていない
田中角栄が暴動の危険を押してフィリピンを訪問したように、外交努力の積み重ねがある
中国・韓国に対しても努力は行われてきたが、最近はパイプが細っている気がする
A,周
デモは反日ではなく「抗日」であり、中国は日本と敵対しているわけではない
靖国・教科書・台湾などの問題が複合的に吹き出たのが今回の抗日デモ
デモの最中に中国を訪れた日本人も「嫌な思いはまったくせず、友好的だった」と証言
A,高
かつて北朝鮮拉致問題のときに在日朝鮮女学生の服が切り裂かれたような不信の連鎖
95年村山首相談話の後も、「創氏改名は韓国人が好んでやったことだ」と発言する政治家
「新しい歴史教科書をつくる会」という運動が日本に存在している現状も不信感がある
A級戦犯とその他戦死者を分けて祀るのが、解決の糸口になるのではないか
A,王
日本がアジア地域の利益を代表するような国になってほしい
村山談話以降、日中のトラブルは常に日本の政治家の発言から始まっている
日中関係も市民レベルでは戦争の話など持ち出していない
A,茅原
72年の国交正常化以降は、日本の国民感情としては「いつも中国にやられっぱなし」
この現代史が次世代には「日本の抗中運動」として噴き出す可能性もある
日本はアメリカに原爆を落とされたが、恨みを言わずに日米関係を築き上げてきた
日中関係の未来を考えるなら、中国がいつまでも戦争問題を持ち出すべきではない
A,孫
韓国の若い世代は祖父母の話として戦時の痛みを知ってはいるが、実感はできない
教科書問題などややこしい問題はあるが、日韓関係は今後も前進してゆくと考える
Q,最後に、日中韓の将来に向けた考えを
片山
靖国問題はすでに記号化されており、正面から解決するのは難しい
A級戦犯を分けて祀るような回避策が現実的だと考える
フィリピンやカンボジアのように、中国や韓国の対日感情も時間が解決することを望む
茅原
日本の安定とアジアの繁栄を考えたとき、日中韓が仲良くする以外に道はない
互いの寛容と理解が重要だが、ポイントは「余裕のある側がそれを行う」ということ
日本が世界で通用する「普通の国」になることが大切
加藤
ある外大の中国語専攻の学生の大半は、白地図に上海の場所を指せなかった
歴史問題以前に、日本人にもっと中国のことを知ってもらう必要を感じている
「中国崩壊論」と「脅威論」の間にある、普通の中国の実態が伝わっていない
同様に、デモに参加した中国人大学生も日本のことを深く知らないだけではないか
対中ODAも中国経済を発展させ民主化を推し進めたのは明らかで、日本の国益にかなう
周
中国人犯罪者の報道率は日本人犯罪者の5倍以上という統計がある
日中関係が悪化しているのは政治家とメディアの責任が大きい
日本に来ている留学生も、両国の架け橋として役割を果たすことを期待したい
例えばエネルギー環境問題などは日中共通の課題であり、協力・競争のモデルとなる
孫
去年は「ヨン様ブーム」で多くの日本女性が韓国を訪れた
政府要人レベルではなく、市民レベルでの日韓交流はこれからも進んでゆくと確信する
王
2000年の交流の歴史を持つ日中韓はアジアの心を共有すべき
高
2007年をピークに日本人口は減少してゆくが、中国は今後も力強く経済成長してゆく
円熟期にある日本が活力ある隣国と仲良くすることは、日本の経済的利益につながる
EUの出発点は、長年紛争の種となった独仏国境のルール地方の共同開発がきかっけ
そのような関係を日韓・日中で創ってゆけるかどうかがカギ
芹田
近代化とは科学技術偏重・軍事優先のことではなかったか
いま「普通の国」と言ったときに、欧米だけをイメージするのは正しくない
「覇道ではなく王道」という歩み方を、新しくこの地域から生み出してゆけないか
カテゴリー:
テーマ:
関連記事 :
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL
http://nada-kobe.com/mt/mt-tb.cgi/790