政策選択ツールとしての環境会計
2005年03月11日
本日の水道局予算委員会では、下記の3項目について質問しました。
1、阪神水道企業団の企業長ポストは典型的な天下り先であり、不要ではないか?
2、水道局職員の夜間待機体制は、もっと効率化できるのではないか?
3、水道局が今回作成した環境会計を、今後は政策選択のモノサシとして活用すべきだ。
今、全国の役所で「コスト削減」「民間委託」がブームになっていますが、
私は次に来るのは「政策選択」の時代だと思っています。
そのときに、「これは必要な政策」「これは効果が出ていない政策」と判断する基準となる
環境会計のような「モノサシ」を今から創り上げておく必要があるのです。
以下、本日の議論についての簡単なメモです。
050311水道局予算質問
1、阪神水道企業団の企業長ポストについて
井坂:尼崎市から神戸市までの阪神4市が共同出資して淀川から水道を引いている阪神水道企業団。
ここの企業長の退職金が任期4年で2,800万円ということがテレビでも報道されていた。
さすがにその後、退職金額を見直したようだが、そもそも企業長ポストは必要なのか?
建設官僚の典型的な天下りポストである企業長は無くしても良いのではないか?
役所:職員数や給水量が一定規模を超えた場合、企業長を置くよう法律で定められている。
実際に全国の大規模な水道企業団は企業長を置いており、市長兼任は小規模なところばかり。
また、4市で利害が相反する場合もあり、どこかの市長が兼任するのでは話がまとまらない。
井坂:企業長を必ず置かなければならないと法律で定められているのか?
阪神水道は企業長と副企業長、重いポストを2つ抱えているが、
企業長は市長兼務とし、副企業長か事務局長に実務家を派遣する形で良いのではないか?
水を買う立場の神戸市は、もう少し阪神水道に厳しく経営改善を求めるべきだと思う。
役所:阪神水道には常に事業見直しを求めているほか、4市管理者会でも経営改善を話し合っている。
企業長は国の河川行政出身で、ダムから工業用水転用に水源をシフトする今、必要な人材。
2、夜間待機体制の見直しについて
井坂:東京都水道局の外部監査で「夜間待機の人数が多すぎる」と指摘されていた。
東京都の待機人数が109人に対し、事業規模が10分の1の神戸市は15人と決して少なくない。
さらなる効率化が可能なのではないかと考えるがどうか?
役所:夜間待機の職員が実際に出動する日数は年間の80%で、一日平均2.5回。
現場作業が2人、センターに残る連絡係りが1人の3人チームを、5つのセンターに配置している。
バルブ操作など長年の経験が必要な業務であり、民間委託は難しいと考えている。
井坂:5つのセンターにそれぞれ1チームずつ配置しておく必要があるのか?
また、バルブ操作などの業務は、ずっと市職員が直営でしてゆくということか?
役所:すでに営業所を統合して5つのセンターにしており、これ以上の統合は難しい。
通報後30分以内に現地到着を目安にしており、センターが受け持つ区域をこれ以上拡げられない。
バルブ操作業務も民間委託がまったく不可能とは言わないが、検討の順序は一番最後。
3、環境会計の活用について
井坂:今回、水道局が苦労しながらもフライング気味に環境会計を創り上げた。
やってみて気付いた課題とその解決方向、意外な発見などはあったか?
役所:環境省のガイドラインが大まかすぎて、どの項目を環境会計に表示するか、
コストや効果の算定法や、環境保全効果を貨幣価値に換算する手法が定められていない。
各都市がばらばらの手法で環境会計を発表しているため、比較ができない。
専門的すぎて納税者に理解してもらえるかどうかも不安。
井坂:環境会計の結論はシンプルで、「1億9,500万円の税金を使ってCO2排出量を年間3,7000トン削減、
これは自動車2,800台の削減にあたり、経済的コストも9億8,500万円削減された」と分かる。
納税者への説明ツールとしてはこれで良いが、一歩進んで政策選択のモノサシに出来ないか?
また、政令指定都市で協力して、環境会計のスタンダードをまとめるべきだと思うがどうか?
役所:政策選択のモノサシにするのは良いと思う。
他都市と基準を揃えるのは、各都市それぞれ事情があって難しいと思うが、調整してゆく。
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コメント
- 鹿の下のまなぴー。
2005年03月12日 21:57建設不動産関係の者です。
お久しぶりです。初めて投稿します。
同じ世代の井坂さんの活動をHPで再確認できて、とても嬉しいです。コメントにありました。
>全国の役所で「コスト削減」「民間委託」がブームになっていますが、
>私は次に来るのは「政策選択」の時代だと思っています。
まさに正鵠を得ていると思います。
私の日頃お付き合いのあるお役所(建設関係の部門)でも、
建物建設→維持管理まで、コスト削減・民間委託が大流行しています。
PFIとか指定管理者制度などなど、、、VFM大流行です。私の日頃業務でも、お役所から
どうしたら建物を限られたコスト内で、建設・維持できるか?について、よく相談を受けます。
私が相談を受けているお役所の所有不動産は、老朽化も激しく、
大規模修繕時期の案件も非常にたくさんあります。本来であれば、その様な建物については、
用途・使い方の位置づけ自体も見直す時期にきていると考えられる物件も多いので、
私からお役所に、建物の用途自体の見直しを提案しているのですが、
なかなかお役所の上層部には届いていない様です。建物を単なるハコと割り切れば、
中身は住民市民にとって本当に必要な政策に合わせた用途に改変していくべきだと思うのですが、
その際に判断基準となる、「投資コスト」と「得られる効用」の比較が難しいのかな?と感じています。
民間の不動産投資だと、その辺りの問題はある程度簡明で、
「投資」と「得られる収益」を、利回りや投資回収期間等々で比較する事ができるのですが、
お役所の場合の比較は、、「はて。どうしたものか?」となってしまいます。
私の能力に問題があるのかもしれませんが(笑)最近、エリアマーケティングソフトといって、
カーナビの地図ソフトに年齢別人口・世帯数・所得水準等を組み込んだものがあります。
それを使えば、
当該施設の何分の以内の圏域に、幼児や小中学生・老人が、何人いるか等は、
簡単に推計できるようになっています。
商業事業者・銀行では、大抵の大手さんなら導入済みだと思います。
公共施設でも同じかな?と思っています。
例えば、老人が多くなりつつある地域に、稼働率の低いハコ(建物)があれば、
それは老人対応の施設として見直していくべきなのかも知れません。
公園のつくりも違ってくるかも知れません。
しかしながら、
今のところ、私の付き合いのあるお役所では、その様なアプローチは考えていない様です。井坂さんの指摘されている、
「これは必要な政策」「これは効果が出ていない政策」と判断する基準となる「政策選択のモノサシ」
は非常に重要だと感じています。今後ともお体にはご自愛下さいね。
なんだか、まとまりの無い感想&トンチンカンな内容になってしまって、ごめんなさい。 - いさか
2005年03月13日 03:55まなぴーさん、コメントありがとうございます。
一度すべてのハコ(公共施設)とヒト(公務員)をリストアップして、
ニーズに合わせて使い道をゼロから考え直せたら良いですね。
国の省庁縦割りの規制がどこまで緩和されるかがカギだと思います。
特区や意見書など、地方からもアクションを起こさないといけません。 - 鹿の下のまなぴー。
2005年03月18日 12:52何度も申し訳ありません。
上記を投稿した、翌々日にはある市から、
老朽化した公民館の改修か建替えか、コスト的にどちらが有利か判断して欲しいとの依頼がきました。
当該公民館は、場所等の問題で稼働率もかなり低い状態でした。なんで、選択肢に「改修」「建替え」しか ないねん!
「用途見直し・変更」「一部縮小して、残りは公園空地にしよう」等々の発想はないんかい?
と言いたくなります。・利益の低い施設は、見直し・縮小が当たり前の、節操のない民間
・現在の政策を是とし、取り敢えず現在機能を維持してしまう公共
両者に隔たりがありますが、
建設不動産業者の私から見ると、お金を無駄遣いしているのは公共だと感じてしまいます。ボヤいてばかりで申し訳ありません。
井坂さんにお願いがあります。
もし、今後「これは必要な政策」「これは効果が出ていない政策」と判断する基準となる
環境会計のような「モノサシ」を創り上げるための検討会がある様でしたら、
差し支えなければ、是非参加させて頂ければと感じています。
自分の仕事内容を勘案すると、そのモノサシの検討会に参加するのは、甚だ場違いかも知れませんが、
現在の仕事でのポリシーというか心の拠り所として、
自分なりにひとつの解答を心に持っていないと、拙い様な気がしています。
特に、今後はお役所からの相談事が急増しそうな状況なので、特にそう感じてしまいます。申し訳ありません。
もし可能であればお願い致します。 - いさか
2005年03月21日 04:28まなぴーさんコメントありがとうございます。
「モノサシ」というか、「モノサシを使った評価」には2種類あります。
ひとつは事務事業評価で、もうひとつは政策評価です。「事務事業評価」は、神戸市役所が実際に行っているひとつひとつの仕事に対する評価で、
神戸市の場合は下記の4つの基準(モノサシ)で現場課長と外部委員が評価しています。1、時代適合性(今の時代ニーズに合っているか?)
2、補完性(役所でなければ出来ない仕事か?)
3、効率性(コストがかかり過ぎていないか?)
4、有効性(市民に有効利用されているか?)神戸市では既にこの事務事業評価制度を使って、全ての事務事業をチェックし始めています。
神戸市の事務事業評価
http://www.city.kobe.jp/cityoffice/09/021/jimujigyou/index.html
さて、ある公民館を事務事業評価したところ、コストも安く、利用者も多かったとしましょう。
これだけで、この事業は「存続すべき」事業と言えるでしょうか?
そもそも何のために、どんなビジョンを目指して公民館を建設したのでしょうか?
事務事業評価より上位の「政策評価」は、「神戸がどう変わったのか」を評価するものです。
公民館の例で言えば、「それで地域の市民活動は活発になったのか?」を測定するものです。
そもそも「地域の市民活動を活発にしたい」という政策目標があり、
その手段として「公民館を建設・運営する」という事務事業が選ばれているはずです。
公民館のコスト削減や利用促進をいくら進めても地域活動が活発にならないのなら、
公民館をやめて地域活動アドバイザーのような人的支援に切り替える方法もあるわけです。神戸市では現在、中期計画「神戸2010ビジョン」を作成しており、
4月1日~28日まで、パブリックコメント(市民意見募集)が行われる予定です。
その中で「チャレンジ指標」という、文字通りのモノサシ(指標)を設定しており、
それによって政策目標が達成されたかどうかを測定しようとしています。
例えば「あいさつ相手が10人以上いる人=55%にする」「観光客数=3000万人にする」等です。
モノサシの検討会には参加できませんが、この中期計画に意見を述べることはできます。神戸市のパブリックコメント
https://www.ssl.city.kobe.jp/public_comment/
なお、ブログに掲載した「環境会計」は、ひとつひとつの事務事業のCO2削減量を評価する点で、
環境面からの事務事業評価と考えられます。
しかし、「CO2排出量を削減する」こと自体が政策目標となっている現在の日本では、
環境会計を政策評価のツールとして使うことも可能です。
本当の政策目標は「地球温暖化に歯止めをかけること」なのでしょうけれど・・・