地域における公共人材の育成

2005年03月26日

龍谷大学の地域公共人材育成ディスカッションに参加。
NPO・専門職大学院・自治体のそれぞれの立場から、
地域の公共活動を専門的に担う人材を輩出する方法や現状の課題について議論しました。

私は教育や人材育成の議論をするときは、「どういう教育をしたらどんな人材が育った」という
事実にもとづいて教育方法を選択すべきだと考えています。
逆に考えれば、いま「素晴らしい人材」とされている人にたくさんインタビューして、
その人たちが受けた教育、きっかけとなった出来事を再現する教育プログラムを作れば、
そのような人材が育つ可能性が高まるのではないでしょうか。

以下、私のメモです。

050325地域社会における公共的人材育成


1、NPOと自治体の人材育成

地域社会における公共的人材の育成・認証の課題は何か?
現状は大学院や自治体などの制度に乗れば先に進める安心感がある
多様な実践が必要な人材育成において、制度ばかり先行し過ぎている面もある
「地域の人材」と言ったときに地域の代表性をどう保つか?

深尾昌峰(きょうとNPOセンター事務局長)
NPOで食べていくことの難しさ
大学院から学生がNPOに仕事を求めて行くが、現場のニーズと一致していない
現場は即物的なものを求めているが、そこに答えはない
NPO人材のキャリアデザインが見えず、例えば将来自治体職員になることも出来ない
メンタルケアもなく志だけで頑張って燃え尽きてしまい、人材の使い捨てになっている

山崎仁士(舞鶴市企画課長)
職員は地域の課題を解決するために生まれてきたはず
平成の合併では団体自治しか論じられていないが、住民自治の視点が大切
職員の意識改革は行財政面からでなく現場から起こってくるべき
若いうちに地域の人と対等な立場で地域づくりに関わる経験が必要
若いうちに「出過ぎる杭」になっておかないと、年とともに議会対応など丸くなる一方
「出過ぎる杭」をどう育てるか、そういう環境をどう作るか

新川達郎(同志社大学教授)
NPOと自治体の人材育成に関するパートナーシップは可能か?
教育プログラムの到達点をどこに設定するのか?
NPOは中小企業経営者タイプ、自治体はコーディネータータイプを求めている
育成すべき人材像について、どこまで共通の目標を見出せるかがポイント

木原勝彬
「志の森大学」で下記3点のコンセプトで公共人材の育成に取り組んでいる
1、市民主権型ガバナンスを担ってゆける人材の育成
2、直接・間接ローカルデモクラシーの活性化
3、サスティナブルな地域運営の実現
助成を受けているが、少数精鋭のプログラムでは採算が合うはずもない
自治体と地域と大学の間にある活動に対して、誰がどのように投資してゆくのか?

鈴木暁子(NPO多文化共生センター理事)
資金調達と人材育成という正反対と思える仕事を同時にしなければならない難しさ
事業運営と組織運営も別の仕事
事業委託を受ける際、実働部分だけで監督部分の人件費が計上されないことが多い
メンターやカウンセラーをNPOに派遣して相談に乗ってやれないか?

川中大輔(A SEED JAPAN理事、NPOまちなか研究所理事)
最近のNPOは活動が細分化・断片化して人材交流や連携が充分ではない
きちんとしたOJTを行う余裕がなく、人材育成がシステム化されていない
学生も研修や現場体験に過剰な期待をし過ぎていないか?
地域人材の条件を抽象化せずに、「あの人のこの部分が素晴らしい」という属人化する

芝原浩美(IIHOE人と組織と地球のための国際研究所研究員)
NPOインターンシップの学生が役所や企業で活躍しても良い
メンターや総務部門などを複数のNPOで共有したりアウトソーシングすべき

山崎
まちづくり会社や地域防災組織など、地域コミュニティーの活用を検討している

木原
もう一歩踏み込んで、専業で地域をプロデュースする専門家を育てたい

山崎晶子(京都市地域づくり推進課)
公の施設をNPOに任せる先行事例を担当した
役所の人事異動後も当初の志が保たれるよう、NPOと行政で共同宣言をまとめた

芝原
協働に関する研修を行っている自治体は3割、全庁的な取り組みがある自治体は2割
NPOと行政が協働事業を実践してゆく中で、課題や目標が見えてくるのではないか?

川中
今日のような議論をする場に、NPO職員や自治体職員をどう巻き込むか?
近くの異業種・遠くの同業種との交流がブレイクスルーの元となる

鈴木
どんな市民社会を目指すのか、どんな人材がいるのかを目に見える形にする必要がある

木原
行政に求める政策は、「市民税1%を市民活動に助成」「地域自治資金を確保する」
首長がマニフェストを掲げ、リーダーシップを発揮しないと変わらない

新川
「地域人材を育てるべき」という共通文化をどのようにつくってゆくかが課題

山崎
NPOと行政が喧々諤々の議論をする裏で、互いに翻訳してあげる人材が必要
一緒に何かをやると、必ず人材は育っていく
現場を持たない職員に、どう感じ考えてもらえるかが課題

深尾
「地域を良くしたい」という純粋な自治体職員が多いことに驚く
役所の中に地域公共人材が育っていく可能性も感じる


2、大学と地域の連携による人材育成

富野暉一郎(龍谷大学教授)
大学と地域が連携した人材育成にはどのような形が考えられるか?
地域人材の専門性を高めるための認証システムはどのようにあるべきか?

今里滋(同志社大学教授)
福岡市東区箱崎に民設の公会堂をつくり、やがてコミュニティーレストランに進化した
商店街の空き店舗に大学が借りて、学生が子供と一緒に社会実験を行っている
大学が地域の中に公共空間を作る中で、地域公共人材が育っていくことを期待する

早田幸政(金沢大学教授)
大学は自己点検評価と認証評価を受けることが義務付けられている
「専門職大学院と専門学校の境界があいまいになっている」と中教審は答申
インプットは文科省が評価するが、アウトプット・アウトカム評価をどうするか?
司法試験合格者数ではなく、学生にどれだけ付加価値をつけ社会に貢献したかが重要
WTO問題で日本の教育も認証制度を設けて市場開放せよ、という圧力がある
教育の土台が確立しないまま制度を整えて人材を輩出しても役に立たない

富野
認証を受けても卒業生を受け入れてくれる自治体やNPOがなければ意味がない
認証や研修がきちんと社会で評価されない限り、この方式は成功しない

坂本勝(龍谷大学教授)
行政と住民が協働体制を築く際に、大学はどのような貢献ができるか?
アメリカ・ドイツには地域人材養成プログラムの認証機関がある
日本の法科大学院のように認証がなければ設立できない方式もある
ドイツでは学生による大学評価も重要な要素になっている

川村喜芳(もと北海道町村会理事)
自治体職員を大学院に2年間送り込んでも、即戦力にはならないことが多い
仕事をしながら5年ぐらいかけて夜だけ大学院に通うようなスタイルが良いのでは?

富野
役所の人事政策や研修は人事当局に委ねられているが、本来は企画部門と連携すべき
さらに役所・地域・大学などセクター間の協働による人材育成をどうするか?

今里
自治体・企業・NPO間のインターンシップ交流事業を九州で考えている
コミュニケーション、コンパッション(共感)、コミッション(任務)が大切

早田
大学院で身に着けた専門性を生かし伸ばす役所であることが大切


3、自治体の人事評価・研修システム

夕部雅丈(高知県職員能力開発センター所長)
まずコンピテンシー6科目の座学、講師は民間から各分野の第一人者を招く
職場改善を企画・実践する過程で、リーダーシップや共感力などが試される
最後のプレゼンで人事・研修・経営品質・外部の4委員が評価し、課長・係長に昇任
コンピテンシーとは、自己理解・対人関係能力を活用して成果を生み出す力
評価方法が確立されて成果に焦点が絞られているのが長所
高知県では実際に、若い管理職や飛び級などの現象が起きている

荒川敏雄(寝屋川市企画財政部長)
これまで役所は不透明・無計画な採用、年功序列の昇任・賃金
係長にならなくても係長級の給与がもらえる「わたり」制度もあった
対議会・対組合・対市民と顔色を見ながら政策決定をしてきた
寝屋川市は4月から係長試験の受験資格を30歳以上に引き下げた
360度評価により部長の勤勉手当に±13万円の差をつけているが、特に混乱はない

川村喜芳(もと北海道町村会理事)
ドイツは17歳で役所に入ると、2年間は行政大学で徹底的に基本を教えられる
あとは仕事をしながら夜間大学などで、本人が学びたいテーマを自ら学んでゆけば良い
職員の専門性に資格を設ける方法もある

木佐茂男(九州大学教授)
人事の流動化を進めるシステムをどう作るか
地方分権されて解雇でも何でもやろうと思えば出来るようになっている
「競争から降りる」ことも許されず、全員が形式的には出世レースを争っている
スイスでは専門性を高めれば役所・NPO・民間企業どこでも移動できる

林田久充(草津市商工観光労政課長)
職員研修に携わっているが、研修プログラムを組むことの難しさを感じている
滋賀県では合併で方向性を見失う新市が出ており、そのための研修も考えている

金井利之(東京大学大学院助教授)
「公務員は全体の奉仕者」という概念は、分かったようで分からない
今回のテーマもどういう人材が具体的に欲しいのかが絞られていないのではないか?

井坂
人材育成や教育をもっと帰納的に実施できないか?
全国で変革を起こした職員にインタビューして、彼らの育ち方・きっかけを再現すべき

林田
県内で先進的なことに取り組んでいる職員を講師に招くことを考えている

大矢野修(川崎市職員研修所副所長)
人事部だけで人材育成をするのではなく、外部で育てる感覚が必要

夕部
コンピテンシーとマニフェストの整合性が今後の課題
「全体の奉仕者」の議論は、特定の県民にターゲットを絞れば回避できる

川村
地域人材は育成するのではなく自然に育ってくるもの、そのための環境整備が必要

荒川
きちんと時代認識を持ち地域住民と交流してゆく職員が、地域人材として育ってゆく

林田
内部講師自身の評価をきちんとすることが今後の課題
人材が流動化すれば研修対象も幅広くなってゆくことが予想される
多様な出会い・交流が人材を育てるというのが重要なポイント

金井
大学は人材育成の場だけでなく、不遇の人材が力を蓄えるシェルターにならないか?

富野
国主導・官主導では住民の多様な価値観に対応しきれない現実がある
分権が必要だが、その担い手が少ないので「地域公共人材」が求められている
震災時に「行政は命も守れない」と判明し、ボランティアが活躍したことが分岐点
地域社会の資源を共有し再構成する中で、人材という資源についても考える必要が出た

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