予算編成の理想像
2005年01月20日
関学大学院の小西砂千夫教授をお招きして、「予算編成の理想像」について語っていただきました。
一般的に、事業ごとに財政課が一件ずつ予算を査定する「一件査定方式」は古いやり方とされ、
三重県の北川前知事のように、総合計画に基づき部署ごとのおおまかな予算配分だけを決め、
細かい事業ごとの予算は各部署に任せる「枠配分方式」が新しいやり方とされています。
しかし、一件査定方式でも鳥取県の片山知事のように成功している例もあれば、
三重県の予算システムをまねたのに上手くいっていない自治体もあるようです。
予算編成の手法・システムが正反対とも言える鳥取県と三重県が共に成功しているのは、
片山知事と北川前知事が政治生命を賭けて政策の優先順位をつけていたからであり、
首長も役所幹部も議会も誰も政治的判断をしようとしない自治体では、
最新の予算編成システムを導入しても意味がない・・・という厳しいお話でした。
以下、私のメモです。
050120小西砂千夫先生「予算編成の理想像はあるか?」
議員には3つのタイプがある
1、住民の目線を徹底するのを使命とする議員
2、理事者の目線と住民の目線を切り替えてバランスよく判断する議員
3、自分が首長になることを想定しながら活動する議員
議員は住民代表であり、理事者(役所幹部)とはまったく立場が違う
しかし住民には両者の違いが伝わっていないことが多い
議員も住民の目線と「自分が首長ならば」というセンスを両立しなければいけない
北川前知事のような「ローカル・マニフェスト選挙」は政策選挙を実現させる狙い
しかし、マニフェストには理事者側の立場と住民の立場が混在する問題がある
たとえば「公用車の廃止」は住民感覚では当然だが、理事者側では枝葉のこと
理事者でなければ見えない、役所の本当の問題に手を突っ込むのが首長の仕事
理想の予算編成はない・・・というより一つに絞れない
首長のタイプによって「片山知事タイプ」と「北川前知事タイプ」の2つに分かれる
鳥取県の予算編成
役所の中のことは全て知り尽くしている、集権的な片山知事
予算は一件査定が中心で、政策評価は行わず、総合計画もつくらない
片山知事の答弁「監査と議会審議が事後評価であり、政策評価など必要ない」
課長査定・部長査定・知事査定の過程が、理由とともに公表されている
一件査定をすると、財政課が主導の予算編成になってしまう問題がよく指摘される
一件査定の短所は、「木を見て森を見ず」になってしまうこと
片山知事は頭の中に森を描きながら木を一本一本査定できる能力がある
知事主導で、知事ひとりの頭の中で編成される予算なので、整合性もある
議会とは常に根回しなしの真剣勝負をしており、予算修正や否決も多い
議会質問は時間制限もなく、「疲れるまでやる」
部長に対しては非常に厳しく対応し、議会答弁の読み合わせもしない
部長は知事の背中を見ながら、常に勉強を続けなければならない
「改革しているかどうかは、議員提案条例の本数で決まる」という見方もある
「議会との真剣勝負」「住民への情報公開」は必ずセットになっている
鳥取県は三重県とともに議員提案条例が非常に多いことで有名
三重県の予算編成
細かい理屈は分からないが、目的地と方向はブレない、分権的な北川タイプ
人間的魅力で職員をやる気にさせて、細かい理屈や手法は職員が自発的にやる
予算は枠予算で、その枠配分を決めるために政策評価や総合計画を用いる
総合計画の政策-施策-事業体系と予算査定時の事業が連動しなければいけない
三重県型の予算編成を行っている自治体でも、一部が欠けていることは多い
執行時に性質別予算になっていると、「どの事業の予算を使っているか」が分からない
総合計画と財政計画の整合性がとれていない例も多く見られる
総合計画と財政計画の整合性は、技術的に解決できる問題ではない
事務事業評価は「この目的のためにこの手段でないとダメか?」を問うもの
政策の優先順位は、政治判断でなければ決められない
企画と財政が衝突するのは、首長や部長会議で政治判断がされていないから
財政計画から枠予算の配分を決めるときも、政治判断が必要になる
三重県型で総合計画・財政計画などの形だけ整えても意味がない
北川前知事も片山知事も手法は違えど、厳しい政治判断から逃げなかった
佐賀県は集権的な鳥取型と分権的な三重県型を上手くミックスしている
統括本部が少人数で方針を決め、各部長は自分の目標を決めてHPに掲げる形
立派な橋であっても、最後の1mがつながらなければ全く役に立たない
最新の制度を導入するよりも、自分の街に欠けている最後の1mをつなぐべき
自分の街の欠けている部分は、理事者の目で見ないと分からない
同時に、財政に関しても住民の目線を忘れてはならない
予算査定のプロセスと意思決定者を明らかにする情報公開も重要
土地開発公社などの含み損も公開すべき
予算健全化についても、そのプロセスや目標値を明らかにすべき
Q:志木市の市民委員会のような、財政への市民参加についてはどう思うか?
A:財政への直接的な住民参加は難しいが、志木市の取り組みを否定はしない
志木市で面白いのは、議会にも予算案を出させようとしているところ
Q:総合計画は総花的で、枠配分の優先順位には何も影響を与えていないが?
A:総合計画の中には基本構想(ビジョン)と基本計画(事業)がある
実際の総合計画は各部署から上がってきが事業を束ねただけであることが多い
片山知事は、基本計画は作らずに基本構想だけ作っている
両方つくる場合でも、基本構想を先につくって、そこから事業計画を作るべき
総合計画は基本構想だけにして、3年単位の実施計画を作るのが現実的
Q:予算編成ではなく、予算そのものを分かりやすくするには、どうしたらよいか?
A:全住民に分かりやすい予算書を配るという、ニセコ町の方法が決定的
普通は事業別につくった予算を、あえて性質別にまとめて分かりにくくしている
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