北川正恭・もと三重県知事
2004年04月25日
「志の森大学」という、NPO主催の議員向け短期集中講座に行ってきました。
「マニフェスト」や「行政評価」を広めたことで有名な、北川正恭・もと三重県知事が、
基調講演として「分権時代の地方政治」というタイトルでお話しして下さいました。
「生活者起点」や「情報共鳴」という考え方が、とくに素晴らしい。
以下、私のメモです。
040424北川正恭「分権時代の地方政治」
「管理から経営へ」を合言葉にNPMを地方から推進
現在は早稲田大学大学院「公共経営研究科」の教授
「大きな政府・中央集権」の政治学・公共政策学から「適切な政府」の公共経営へ
情報公開を前提にした政治学・行政学にパラダイムシフトしたい
国会議員に戻らず、自由な立場でムーブメントを起こしていきたい
選挙でHPが使えるように公選法を改正してゆく
松下幸之助「水道の蛇口」論:良いものを多くの人に供給するのが使命
政治もサプライサイドに立った政官財の護送船団方式で80年代まで成功した
物が余ってくると、プロダクト・アウトからマーケット・インに変わる
農林水産省は未だにサプライサイドに立っていて食品危機に対応できない
同様に変革が遅れたのが地方行政
不適正なカネをつくるのに長けた総務系職員ばかり出世していた
業界団体などTax Eaterから、生活者Tax Payerの視線を起点にする
「納税者」では高齢者や子どもが含まれないので、「生活者」と呼んだ
「生活者重視」では「行政が」重視するというニュアンスになってしまう
「県民を満足させる」という行政主体の政治ではなく「県民が満足する」
サービスの受益者としての客体ではなく、統治の主体として住民をとらえる
予算編成過程をオープンにして、業界団体による政治力行使に挑戦した8年
役所の各部署が業界団体を従える「庇護&依存」のパターナリズム
情実行政からルールによる行政に変えた
県庁6000人職員と徹底的な話し合いをした
ディベートではなくダイアローグ、結論を出さない意見交換を心がけた
課長も含め個人の机を無くし、朝来たらどこに座ってもよい形にした
引き出しは個人的な暗黙知の集積であり、ネット上に形式知として蓄積すべき
情報共有を始めると、「苦情」が「情報提供」に聞こえるようになってきた
住民と行政が対立から対話に変わり、お互い理解が進めば「共鳴」に変わる
「北京の蝶々が羽ばたけば、ニューヨークでハリケーンが起こる」
プリゴジンの理論:異質分子が一つ入るだけで生態系全体が一瞬で変わる
47府県・3300自治体がそれぞれ蝶々が羽ばたけば日本が変わる
「全国自治体善政競争・平成の関が原合戦」ホームページ
利害調整や願望リストの公約から、守るためのマニフェストへ
岩手県知事がマニフェストを掲げて当選したら、土木部長がさっそく3案持ってきた
公共事業で土木業界を延命させるのではなく、産業移転に税金を使うのがトップの決断
首相が「公約を守らないのは大したことではない」と言っても怒らない程度の国民
政治家を選んだ側も責任をとらないといけない
マニフェスト運動も、国がやったのではなく三重県四日市で始まった
マニフェストの書けない首長は、自己決定・自己責任のない国の下請け機関
2000年の地方分権法で機関委任事務が廃止された
日本では水戸黄門が人気だが、あの印籠は法的根拠のない権力
ロビンフッドのような民間出身のヒーローはなかなか出てこない
納税者自身も変わっていかなければいけない
知事会議で補助金返還運動を提案したら、高速道路を通したい鳥取県知事は降りた
学者は理想論でも良いが、政治家は現実と折り合いをつけることも必要
補助金100億円を返還して、自主財源が70億円しか来なくても工夫する決意
返せない借金を持っているのだから、地方自治体はすでに倒産している
三重県の4つの県立病院長に「4年で黒字化」を指示した
「あの病院ができたのだから、他の部署でもやれる」と県庁全体に展開した
病院組合の反対で院長の指名が8ヶ月間できなかったが、徹底して任命権を行使した
組合の強弱で特別勤務手当てに差がついていては、組織一丸となれるはずがない
5年後に組合側が「労使協働委員会」を立ち上げ、労使交渉を公開するようになった
黒字化の理由を組合長が「クイックレスポンス」の一言で述べた
一人一台パソコンにより形式知が蓄積され共有されたことが効果的だった
シャープ工場誘致に際して90億円を出したが、非公開でやれば知事の背任行為
議会でも「癒着だ」と追及されたが、知事がプロセスを公開しながら決断したこと
亀山市も45億円を出したため、国があわてて150億円出した
民間会社が決断すれば国内でも製造業ができる、ということを地方が示した
財政課と人事課は事務事業評価が進んだので廃止した
財政会議で包括予算を組んで、技術的なことだけ財務担当職員がする
GPI:ジェニュイン・プログレス・インディケーター(本当の成長指標)
多様な成熟社会では、環境や心の豊かさなど多様な指標が存在する
企業でも利潤だけでなくCSR(社会責任)が言われるようになった
HSM(人的満足尺度)というものも開発されている
議員提案条例をいくつ出すか?が議会改革のひとつの指標になり得る
ベンチマーキングで他市と比較して、ベストプラクティスに合わせていく
地方が互いに恥部を隠しあっていると、国が地方をコントロールしやすい
質疑応答
Q,三重県の評価システムからだいぶ遅れてNPMが流行ったのはなぜか?
A,事務事業評価を「でたらめでも導入しろ」と言ったので導入できた
評価は道具であり使いよう、議会の利益誘導を減らす効果があった
理念・政策から事務事業の良し悪しを評価しないと正しく判断できない
NPMとは、「公の仕事は誰がやってもよい」ということ
BPR(ビジ・プロ・リエンジニア)で仕事を変えるのがNPM
Q,日本のPFIはBTO方式なので偽物だと言われるが?
A,補助金に縛られているのでPFIの施設管理を民間には頼めない
ハード面のPFIからソフト事業のPPPへと進化している
道路や公園を造ったあとの管理は住民が行うという新しい形
Q,中野区では民間活用について庁内だけでなく住民からも反発を受けているが?
A,そのような実験が東京都中野区で起こっているのは良いこと
これまではそのような経験すらなかった
Q,公務員の責任の取り方はどうあるべきか?
A,公務員法の改正が必要
首長に逆らう公務員を解雇できる政治任用が必要
その前に政治が信頼されなければ始まらない
ITが進めば市役所は無くなるかもしれない、通販もオフィスレス
残された疑問点
NPMの次に来るのは何か?
市民経営か?役所や議会をまるごとマーケットにさらすことか?
「選ぶ側の責任」は生活者が必ず負わされているのでは?
選択肢が少なすぎ、比較材料がフェアに表示されていない現状では選べないのでは?
村尾さんがやっていたシチズンズ・チャーターとGPIはどう違うのか?
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