植田和弘・京都大学大学院教授

2004年04月26日

植田和弘・京都大学大学院教授の講演テーマは
「持続可能な社会と環境マネジメント」。
環境問題でよく言われる「持続可能(サスティナブル)」という考え方は、
実は社会システムの面でも、経済・財政の面でも重要な考え方だということでした。
当たり前か、借金を平気で重ね続けている自治体が「持続可能」なわけ無いもんな。

以下、私のメモです。

040425植田和弘「持続的な発展と環境マネジメント」

住民は投票による意思決定者であり、納税による負担責任者
選挙(特に国政)は本来「歳入・歳出構造」すなわち予算案の選択であるはず
ところが、政権与党の歳入・歳出については批判が多い

70年代までは北欧もヨーロッパもアメリカも全体的に予算規模が増大していた
1978年カリフォルニア州で「これ以上の増税を禁止する」という「提案13号」運動
「自分に決定権があるか否か」ということは参加意欲に大きく影響する
しかし、課税権を制限すると、結果的に公共事業より先に福祉や教育が削られる
住民の選択によって決定した政策が、住民の願いと違う結果をもたらすこともある

持続可能な地域づくりとは、行政の仕事ではなく政治プロセスそのもの
これまでの延長線上にあるのではなく、発展のあり方についての新しいパラダイム

「持続可能」ということには3つの意味がある

1、エコロジカルな意味
80年に国際自然保護連合の出した「世界保全戦略」
人間が末永く自然を利用できるように保全するという考え方

2、誰もが関わることのできる、という社会的な意味
経済開発が必ずしも発展途上国の収入増につながらなかったことへの反発
アマルティア=セン「経済的な満足度ではなく人生の可能性を高めるための開発」
教育による識字率の向上や、ジェンダーなど社会問題の解決
多様な住民の能力を高め、それを活かすことのできる地域社会づくり

3、グローバルな経済圧力に負けない、という経済的な意味
グローバリゼーションは「同じものを作るなら一番安いところで作れ」という考え方
地域の財政危機や経済の空洞化をどのように回避するか

グローバリゼーションに対抗するためEUはヨーロッパ各国の障壁をなくした
しかし同時に、EU内部での「ミニ・グローバリゼーション」が起こった
この問題を解決するために、「持続可能な地域」という発想が生まれた
日本では「持続可能」という言葉が環境問題の中でしか捉えられなかった
地域の発展のために外部から企業を誘致するという手法が取られてきた

アメリカのアセスメントは「みんなが納得できる方法を選ぶ」ための手続き法
代替案や「開発しない」という選択肢も示される
議論は延々と続いて時間がかかるが、地域を大きく変えるのだから当然だという思想
情報が隠されず、専門家の意見を聞く機会もあり、議論を尽くした末の多数決
アメリカは京都議定書を離脱したが、州単位では温暖化対策が進んでいる

日本のアセスメントは「公害が起こらなければそれで良い」という公害防止調査
「開発の免罪符」と呼ばれることもある
選択肢は役所の内部だけで検討され、アセスメントの頃には実施が決まっている

70年代はドイツから日本に「自治体の環境政策」の視察が大勢訪れていた
法的根拠のない公害防止協定を企業がきちんと守っていたことも不思議がられた
当時の日本政府は環境政策に冷たく、水俣病も発見から12年間は認定されなかった

持続的な社会をつくろうと思えば、公共領域は大きくなるだろう
「官と民のパートナーシップ」という場合は、当然「民」も公共領域に含む
まちづくりのビジョンを市民が選び、実行主体を官・民・NPOなどから選ぶ
まずは、そういうことが可能な法的基盤をつくる議員を住民が選ぶこと
住民自身が自分たちのルールを決める練習も必要だと思う
批判して新たに創り上げる能力、ルールの消費者ではなく生産者になるべき


質疑応答

Q,「社会的な意味での持続可能性」は具体的にどういうことか?

A,社会的排除の無い、差別の無い社会をつくるということ
  ドイツでは反核平和・ジェンダー・エコロジーの3つの市民運動が起こった
  所得が増えたら解決する問題ではなく、お金で解決しない問題

Q,持続可能な地域経済・財政を実現するのは簡単ではないのでは?

A,人材や伝統など、自分の地域の宝探しをすることが必要
  コミュニティーの中に課題を見つけて仕事を興す
  日本の場合には東京への一極集中も課題
  「合併したら経済的な持続可能性が高まる」ということはない
  地域であがった利益や地域で育った人材が、再び地域に再投資される環境づくり
  
Q,土建業や農業など地域産業の保護が、結果的に競争力を弱めているのではないか?

A,日本ではハード産業ばかりでソフト産業が遅れている
  新しい建物を建てる場合は寄付が集まるが、よい先生を雇うために寄付すべき
  地域産業が土建業しかないという状態になってしまったことが問題
  ヨーロッパではエネルギー政策や交通政策も自治体の課題として工夫されている
  農業は地域に根ざした産業であり、土建業とは別の理由で守らなければいけない
  
Q,日本はソフトが遅れているというが、都市景観などハードも遅れているのでは?

A,都市景観の問題こそ、実は公共空間をどうするか?というソフトの問題
  日本の都市計画はスクラップ&ビルドであり、建設廃棄物が非常に多い
  
Q,地方都市の商店街活性化をどうすべきか?

A,フライブルグでは市街地を自動車通行禁止にすることで商店街の滞在時間が延びた
  都市のアクティビティーと結びついた商業でないと難しい
  湯布院は別府温泉と差別化するために、「少人数・女性客」に特化した

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