大住莊四郎・関東学院大学教授

2004年04月26日

NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)という「役所の動かし方」が流行っています。
「民間企業を見習って、成果主義で役所を動かして行こう」
「民間でやれることは民間に任せて行こう」という考えです。
この分野の第一人者・大住莊四郎さんに「NPMと行政評価」というテーマで講演していただきました。

以下、私のメモです。

040425大住荘四郎「NPMと行政評価」

行政が実施するNPMや行政評価を、議会側でどう見てどう活用するか
行政評価を導入したものの、何かおかしいと感じている職員は多い
「行政評価を行っている部署」のアウトプットは報告書だが、アウトカムは何か?

NPMの背景には、財政赤字と公共サービスの拡大がある
「増税が市民サービス削減か」という安易な二者択一論に陥りがち
民間企業がこんな二者択一をしたら倒産するので、生産性の向上という第三の道
行政も民間並みに生産性を向上させようというのがNPMの起こり

古典的なNPMは政策立案と執行を分離し、執行業務をマニュアル化した
サービス内容を標準化することによって、民間企業やNPOもサービスに参入できる
市場原理が働くことによって執行業務の効率化が進む
イギリスではマニフェストによって政策が選挙時に決められてしまう

政策立案の価値判断に踏み込んだのが最近のNPM
マネジメントの基準を顧客に対する業績・成果志向に変えてゆく、顧客主義
多くの自治体では行政評価を導入するだけで、業績・成果志向になっていない
業務面では、法令・手続きを簡素化して現場へ権限委譲すべき
財務面では、性質別予算から包括予算や業績予算に変えるべき
権限委譲と包括予算で現場が自由に工夫できるようにして、その成果を評価する

改革は痛みを伴うが、痛みだけでは誰も改革をしたがらない
改革のメリットが説明されず、政治力によって我慢だけを強いている例が多い
愛知県瀬戸市の改革では、「職場の雰囲気が良くなり、満足度が上がる」と説明

変革をする人が得をする仕組み、少なくとも損をしない仕組みに変える
変革に必要な情報や手法を整備する
行政評価は変革のための重要な経営情報だと捉えるべき
行政評価を導入するだけで何かが変わるのではなく、古い仕組みを捨てることが必要

行政評価の実態
事業を1件ずつ評価して、無駄な事業を洗い出し、止めさせるための行政評価
行政はそもそも競争が無いため目標も立てられず、業績評価の意味がない
数値目標を出させると、達成可能な無難な数字を出してくる
企業は「これを達成しないと会社がつぶれる」という目標が自動的に決まる
コンサルは「行政評価の導入」が仕事であって、「役所の経営改革」ではない
愛知県瀬戸市は「経営改革」で業務契約しており、行政評価を導入していない

三重県は「自分の事業に問題あり」を申告した係長に不利な扱いをしなかった
福岡市のMOVEシートも使命や成果目標を書かせる課題抽出型シート
どんなシートを使おうと、顧客の立場で目標を高く掲げ、業務を改善することが大事
失敗している自治体のシートは、ほとんど「事業継続」という自己評価が書かれている
議会は個別のシートを見るより、業務改善に結びついているかをチェックすべき

事務事業評価は効率性を測ればよいが、政策評価は価値判断が必要になり難しい
SWOT分析などで価値判断をするのも良い方法
執行部門の目標もトップが価値判断によって掲げることが大切
横須賀市や藤沢市などの先進自治体でも、評価結果を予算に反映できていない

三重県議会からの提案は「北川ビジョンに無い」という理由でことごとく却下された
議会は行政評価を外部評価できれば良いが、相当の専門性が求められる
参加と協働の場作りを議会が担ってはどうか?

やるのはSWOT分析とIT化ぐらいで十分
NPMの効果的な進め方はグローバルスタンダードの先進事例から学ぶのが早い
コンサルが必ずしも正しいことを教えてくれるとは限らないので、丸投げは危険
日本の先進事例は少なく、横須賀市や藤沢市も実は悩みながら進んでいる
三重県庁は先進事例がなかったため膨大な試行錯誤を行った

Q,外部評価は必要ないのか?

A,行政の独善を防ぐという目的があるのだろうが、外部評価委員は苦労すると思う
  横須賀市は外部評価をマネジメントに取り込んだが、あまり良い方法とは思えない
  議会が外部評価の代わりをすれば良いのではないか

Q,民意はどこに反映されるのか?

A,住民に施策の優先順位をアンケートしたとしても、使える結果は出てこない
  施策より上位の政策ごとに市民参画で指標を作ったほうが有効
  オレゴン・ベンチマークのような社会指標は政策と1-1対応しない
  社会指標が悪くなれば、当然マネジメントや施策に問題があるということになる
  
Q,先進例のNPMを真似るだけなら、どこに自治体の個性が出るのか?

A,庁内事情や首長の個性が違うので、導入の仕方は当然異なる
  NPMで実現すべき理念こそが自治体の個性を発揮すべきところ

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